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自分で選択してこなかった大人

ことばキャンプで取り上げる「どっちにする?」のワークは、二者択一、AかBかどちらかを自分で選ぶ単純な言葉遊びです。たとえば「りんごとバナナ」「プールと海」のように。

このワーク、単純なようですが、深い意味があります。

人は選択肢の中から何かを選ぶときに、自分の心に問いかけます。そして自分で決めるのです。

この作業が、自尊心を高める上ではとても重要です。

自尊心が低い人は、自分に自信がないので、自分のことが自分で決められません。

Sさんは、有名な中高一貫校を卒業して国立大学に現役合格。大学卒業後は日本で給料が高いトップ10の会社に入り、優秀さを発揮して管理職にまでなりました。40代に入った時、彼は独立起業します。ところが事業は思うように成功せず、5年ほど経って会社員に戻りました。再就職した会社では慣れない経理の仕事をしていますが、本当に自分がやりたい仕事ではないと悩んでいます。

Sさんのこれまでの人生では、自分で選ぶという行為が殆どありませんでした。幼少期は親の重圧が強かったそうです。なんでも親がやってあげて決めてあげての繰り返し。進学先は親の意向で決めました。就職先も、独立起業も再就職も、自分で選んだというよりは、家族や他人から背中を押されたからそうした、と言います。

今、Sさんは精神的クライシスにあります。自分で選んでこなかった人生だということに気が付き始めたのです。かといって、これまで「自分の心に問いかけ、心の声に素直に従う」ことをしてきていないので、今更ながら選ぶことができません。やりたい仕事ではないけれど、他人の評価を気にしてやめられない自分。辛いけれど現状を変えるだけの勇気も出てこない。自分の存在意義そのものも見えなくなって、漠然とした不安の中で日々を悶々と過ごしています。

子どもの頃から、自分で決めるということは大事です。

ことばキャンプの「どっちにする?」のワークは自宅でも簡単に取り入れることができます。

親は、子供に自分のことは自分で決めさせて、自尊心を高める工夫をしましょう。